海のプラごみ問題とは?

1) 海のプラごみ汚染が私たちの健康も脅かしている

 プラスチックの分子構造はとても安定していて、紫外線や波によって小さなマイクロプラスチックになっても分解されているわけではありません。そして、プラスチックは、摂取すると乳がんや生殖機能の異常、発達障害の原因になると怖れられている『POPs(残留性有機汚染物質)』を海中で吸着する性質があるため、マイクロプラスチックを小魚などの小さな動物が食べ、それを食べる海洋生物の身体にはPOPsが濃縮されて蓄積されていきます。食物連鎖の最上位にいるのが私たち人類なので、私たちの健康も危険にさらされています。その上、現状のままだと 2050年には海洋プラスチックごみは海の魚の量を上回ると予測されています(WWFジャパンサイトより)。

図1:海の食物連鎖とプラごみ

  POPsは、ヒトのホルモンと構造の一部が似た形をもつ化学物質であることから『環境ホルモン』とも呼ばれ、環境省がリストアップしただけでも70種類あります。環境ホルモンは、本来はホルモンと結合することで信号を受け取る受容体(レセプター)という器官にあたかも本物のホルモンのように結合してしまうため、ホルモンのバランスが崩れ、身体の健康を保つ働きが弱まって生殖機能や甲状腺機能などに重大な影響を及ぼすと言われています。また、性別や年齢によって受ける影響には特徴があります。

 アムステルダム自由大学(オランダ)の研究者らが2022年3月に発表したレポートでは、健康なボランティア22人から提供を受けた血液サンプルを調べたところ、17人(77%)の血液からマイクロプラスチックが検出されたという結果が発表されました。
 また、健康被害が懸念される環境ホルモンの濃度は、海水に比べてマイクロプラスチックから検出される量は10万~100万倍の汚染濃度といわれます。汚染物質を吸着したマイクロプラスチックが魚介類や海鳥の消化器官から検出されています。その汚染物質は生物の脂肪に移行し生物濃縮として蓄積されています。

●女性<乳がん・子宮内膜症の増加
 プラスチックから溶け出したノニルフェノールによって乳がん細胞が増殖してしまう。
●男性<生殖機能低下
 精子数の減少・精子の濃度低下してしまう。
●胎児<発育異常・知能への影響
 発育初期に大きく関係するため、水中に残留したPCB(ポリ塩化ビフェニル)は知能発達への影響がある。
POPsの蓄積を気にせずに、おいしい魚を安心して食べられる未来のためにも、プラごみを海に放置してはいけません。
残留性有機汚染物質(POPs)ってどんな物質?(環境省資料)

2)日本近海のマイクロプラスチック濃度は全海洋平均の27倍!

 環境省からの委託で九州大学の磯辺篤彦教授たちの研究チームが2014年~2016年の間に実施したマイクロプラスチックの実態調査によると、プラごみ流出量が多い国の周辺から黒潮が流れてくる日本の周辺海域はマイクロプラスチック量が多く、世界中の海の平均値に比べて27倍も含まれていました。

図2:世界各国のプラスチック海洋投棄レベルの比較
図3:1平方kmあたりのマイクロプラスチック存在量の比較(出典:講談社サイトより)
図4:日本周辺海域の表層を浮遊するマイクロプラスチックの濃度(出典:環境省サイト)

3)2030年に3倍、2060年には4倍!放置は現状維持ではない

 プラスチックの使用量が年々増えるに従って不法投棄も増え、陸から海に流れ出る海洋プラごみ量は急増しており、今や世界で年間800万トンも流出しています(環境白書およびWWFジャパンのサイトより)。さらに年間1,000万トン~1,200万トン流出しているという推計もあります(IDEAS FOR GOODサイト)。
 現状のままだと日本周辺や北太平洋中心部の海域では2030年までに海洋上層での重量濃度が2016年比で約2倍になり、2060年までには約4倍となると予測(九州大学・礒辺研究室サイト)されている状況ですから、何もしないことは現状維持ではなく悪化していくことです。このままでは海ばかりではなく、地球全体の生態系も危ないと言われ、国連でも「持続可能な開発目標(SDGs)No.14」として取り上げられるほどに状況は悪化してしまいました。そして、流出は今も加速し2050年には今の4倍になると予測(WWFジャパンサイトより)されています。流出する量より減る量を多くするための、具体的なアクションが必要です。

図5:九州大・磯辺研究室グループによる太平洋マイクロプラ浮遊量の50年予測(出典:礒辺研究室サイト)

4)海洋プラごみの半分以上が家庭ごみ、誰もが他人事ではない

 たとえば、屋外のごみ箱からこぼれ落ちたペットボトルは風や雨に流されて川に流れてしまうことなどがフィールド調査で指摘されています。消費者のひとり一人が、海洋プラごみの原因になるような生活習慣がないか自己確認して、改善すべきところを改善していくことで、川や用水路を通じて海に流れてしまうプラごみも減らしていくことができます。

海洋プラごみのうち51%が家庭ごみ、34%が漁業ごみ、15%が農業や工業からのごみです(環境省資料および愛知県海岸漂流物環境学習サイトより)。海ごみの半分以上が街由来の生活ごみで誰もが他人事ではないので、プラごみの発生を抑制する生活習慣が浸透しなければ流出の元栓は閉まりません。

 また、きちんと分別して捨てているつもりでもマイクロプラスチックが流出する経路はたくさんあります。プラごみは処分工程で破砕されマイクロプラスチックが発生しますが、破砕後に洗浄すると水を排水する際にフィルタを透過していしまい、その量は侮れません。カナダの海洋フロンティアインスティテュート(OFI)のマイクロプラスチック研究者で、ピレネーの泥炭地の調査を担当したスティーヴ・アレン氏ら科学者チームが2023年5月に発表した報告によると、米国の調査例では1つのリサイクル施設から年間300万ポンド(1360トン)のマイクロプラがフィルタで除去できずに流出していたとのことです。

※全体像をつかみやすくするため図は一部簡略化してあります

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